【発注者本音対談】「代理店選びの真実」|大手メーカー×スタートアップ企業マーケティング責任者が語る発注の裏側

【発注者本音対談】「代理店選びの真実」|大手メーカー×スタートアップ企業マーケティング責任者が語る発注の裏側

対談者プロフィール

山田 良介(仮名)|45歳|大手電機メーカー マーケティング部部長

  • 従業員数3万人の上場企業で15年間マーケティングを担当
  • 年間広告予算15億円を管理、動画制作は年間50本以上を発注
  • 「安定性と確実性」を重視する大企業マーケティングのプロ
  • コロナ禍で予算半減の厳しい状況を経験

鈴木 彩香(仮名)|32歳|IT系スタートアップ企業 CMO

  • 従業員数120名の急成長企業でマーケティング全般を統括
  • 年間マーケティング予算3億円、動画制作は月3-5本のペース
  • 「スピードと結果」を最優先する新興企業のマーケティングリーダー
  • 限られた予算で最大効果を追求する効率化のスペシャリスト

第1部:代理店選びの真実|表に出ない選定基準

司会:まず、代理店を選ぶ際の本当の基準について、率直にお聞かせください。

山田:正直に言うと、提案書の内容は2番目なんです。まず見るのは「この会社は潰れないか」「担当者は来年もいるか」。大企業だと、案件が途中で頓挫するリスクを何より恐れる。

鈴木:うちは真逆ですね(笑)。まず「来週から始められるか」「今月中に成果が出るか」。会社の安定性より、目の前の結果を出せるかどうか。スタートアップは1ヶ月の遅れが致命傷になりますから。

山田:でも鈴木さん、それで失敗したことはないですか?急いで選んだ代理店で。

鈴木:もちろんあります!3ヶ月で3社変えたこともある(笑)。でも、ダメだったらすぐ切り替える。それもコストの内だと割り切ってます。山田さんの会社だと、そう簡単にはいかないでしょ?

山田:そうなんです。一度契約したら最低1年、普通は2-3年の付き合いになる。だから最初の選定で絶対に失敗できない。稟議書に「なぜこの会社を選んだか」を論理的に説明する必要もあるし。

鈴木:私たちが見るのは、担当者の「目の輝き」ですね。この人は本気でうちの事業を成功させたいと思ってるか。大手代理店の営業さんって、正直「数ある案件の一つ」感が透けて見えることがある。

山田:それは…否定できないな。うちみたいな大手だと、代理店側も「安定案件」として見がちかもしれない。でも逆に言うと、継続的で予測可能な売上を提供できるメリットもあるわけで。

鈴木:でも最近、大手代理店の営業さんでも「本気度」が高い人が増えてる気がします。コロナで競争が激しくなったからかな?

山田:そうかもしれない。うちも予算削減で、代理店にとって「おいしい案件」じゃなくなったから、本当に価値を提供してくれる会社だけが残ってる。

第2部:予算の真実|見積もりと発注の舞台裏

司会:予算設定や価格交渉について、発注側の本音をお聞かせください。

山田:みんな誤解してるけど、大企業は「安ければいい」わけじゃない。むしろ安すぎると「大丈夫か?」と不安になる。適正価格で、その根拠がしっかり説明できることが大事。

鈴木:うちは完全に「コスパ重視」です。1円でも安く、1日でも早く。ただし、安かろう悪かろうは困る。限られた予算で最大の効果を出してくれる代理店を探してます。

山田:予算って、実は結構柔軟性があるんですよ。良い提案があれば、上司を説得して予算を増やすことも可能。逆に、予算ありきで中途半端なものを作るより、適正予算で確実な成果を求める。

鈴木:でも山田さん、稟議とか面倒じゃないですか?うちは私の判断で即決できるから、スピード感は圧倒的に早い。

山田:確かに時間はかかる。でも、その分しっかり検討するから、後で「やっぱり違った」ということは少ない。それに、稟議を通すプロセスで、社内の関係部署との調整も済むから、実行時のトラブルは減る。

鈴木:なるほど。私たちは逆に、やりながら修正していくスタイル。だから代理店には「変更対応の柔軟性」を求めます。仕様変更は日常茶飯事だと思ってもらわないと。

山田:それは代理店泣かせですね(笑)。うちは逆に、最初に決めたことは基本的に変更しない。その分、最初の段階で徹底的に詰める。

鈴木:でも正直、代理店さんには「予算の上限は言わない」ようにしてます。上限を言うと、必ずその金額に近い見積もりが出てくるから(笑)

山田:あー、それは確かに。うちも最近は「このくらいの規模感で」という言い方をするようになった。ただ、予算感を全く言わないと、現実離れした提案が来ることもあるから難しい。

第3部:提案の本音|心を動かす提案vs響かない提案

司会:どのような提案に心を動かされますか?逆に、がっかりする提案の特徴は?

鈴木:一番嬉しいのは「うちの事業を本当に理解してくれてる」と感じる提案。競合分析もそうだし、ターゲット顧客の行動パターンとか。表面的な理解じゃなくて、深く調べてくれてる。

山田:私は「リスクへの配慮」がある提案に安心感を覚える。「こんなリスクがありますが、こう対策します」って。問題を隠すんじゃなくて、先回りして対策を考えてくれる。

鈴木:あー、でも私は逆に「リスクの話ばっかり」する代理店は嫌ですね。「でも」「しかし」「リスクが」って。こっちはリスク承知でスピード重視なのに。

山田:それは業界の違いかもしれない。製造業だと、一つのミスが大きな問題になるから。慎重すぎるくらいがちょうどいい。

鈴木:最悪なのは「前例踏襲」の提案。「A社さんでこうやって成功しました」って、そのままコピペしたような内容。うちはA社じゃないのに。

山田:それは確かに。ただ、成功事例は参考にしたい。でも「カスタマイズしてくれてる」感が欲しい。「山田さんの会社だと、ここをこう変える必要がありますね」って。

鈴木:あと、「若いから」って理由で、若いスタッフばかり提案されるのも嫌。私たちも経営層は40代50代なんで、きちんとした経験豊富な人に対応してほしい。

山田:逆に私は、若い人の斬新なアイデアを期待することもある。ただし、「なぜそう思うのか」の根拠はしっかり欲しい。感覚だけじゃなくて。

鈴木:一番心に響くのは「一緒に成長しましょう」という姿勢かな。うちが成功すれば、代理店さんも成功する。そういうパートナーシップを感じられる提案。

山田:それは同感。「単なる発注者と受注者」じゃなくて、「同じ目標に向かう仲間」として見てくれる代理店は信頼できる。

第4部:失敗プロジェクトの真相|なぜうまくいかなかったのか

司会:失敗したプロジェクトの経験があれば、その原因について教えてください。

山田:最大の失敗は3年前の新製品PR動画。予算1,500万円をかけたのに、全く話題にならなかった。原因は「安全すぎる提案」を選んだこと。リスクを恐れすぎて、インパクトに欠けた。

鈴木:私は逆に「攻めすぎて」失敗したことがある。炎上覚悟でエッジの効いた動画を作ったら、本当に炎上した(笑)。でも、そこから学んだことも多い。

山田:鈴木さんはポジティブですね。うちの場合、失敗すると「なぜこの代理店を選んだのか」「稟議書の判断基準が甘かったのでは」って責任問題になる。

鈴木:あー、それは辛い。私は「失敗から学べばいい」というスタンスだけど、山田さんの立場だと「失敗は許されない」のか。

山田:でも最近は、少し考え方が変わった。「安全な失敗」より「チャレンジした失敗」の方がマシだと。ただし、失敗の理由を論理的に説明できることが前提。

鈴木:失敗で一番困るのは「代理店が逃げる」こと。問題が起きた時に、連絡が取れなくなったり、責任を押し付けてきたり。そういう代理店とは二度と仕事しない。

山田:それは最悪ですね。うちが評価するのは「失敗した時の対応」。問題を隠さず、素早く報告して、改善策を提示してくれる代理店は信頼できる。

鈴木:あと、「想定と違った」という失敗も多い。制作途中で「これじゃない感」が出てきた時に、軌道修正できるかどうか。頑固に最初の企画に固執する代理店は困る。

山田:コミュニケーション不足も大きな原因。定期的な進捗報告、中間段階でのすり合わせ、些細な変更でも報告してくれる。そういう基本的なことができない代理店は意外と多い。

第5部:アフターコロナの発注方針|変わったこと、変わらないこと

司会:コロナ禍を経て、代理店に求めることは変わりましたか?

山田:「効率性」への要求が格段に高くなった。予算は半分、でも効果は維持してほしい。無理な要求だと分かってるけど、それが現実。代理店にも相当な創意工夫を求めている。

鈴木:うちは逆に「確実性」を重視するようになった。コロナ前は「とりあえずやってみよう」だったけど、今は一発一発が真剣勝負。失敗している余裕がない。

山田:オンライン対応は必須になった。Zoomでの提案、リモートでの制作進行、非接触での撮影。これができない代理店は選択肢から外れる。

鈴木:でも意外に、オンラインの方が効率よかったりする。移動時間がないから、打ち合わせの頻度を増やせるし、画面共有で資料も見やすい。

山田:ただ、完全にオンラインだと「人となり」が分からない。信頼関係を築くには、やはり直接会うことも必要。バランスが大事。

鈴木:代理店選びで重視するようになったのは「危機対応力」。コロナみたいな予期しない事態が起きた時に、どう対応してくれるか。過去の危機対応事例を聞くようになった。

山田:そうですね。「平時の提案力」だけじゃなくて、「有事の対応力」。予算が急に半分になった時、納期が1ヶ月短くなった時、どう動いてくれるか。

鈴木:あと、「デジタル対応力」は必須。AIツールを使いこなせる、データ分析ができる、最新トレンドを把握している。これができない代理店は時代に取り残される。

山田:でも、技術だけじゃダメ。結局は「人」なんです。困った時に相談できる、信頼できる担当者がいるかどうか。これは今も昔も変わらない。

第6部:理想の代理店像|5年後に求められる条件

司会:最後に、今後理想とする代理店像について教えてください。

鈴木:「事業パートナー」としての意識を持ってくれる代理店。単なる制作会社じゃなくて、うちの事業成長に本気でコミットしてくれる。売上が上がれば一緒に喜んで、下がれば一緒に悩んでくれる。

山田:「専門性」と「汎用性」の両立。うちの業界のことを深く理解しつつ、他業界の成功事例も持ってきてくれる。視野の広さと専門性の深さ、両方欲しい。

鈴木:5年後は、多分AIがもっと進歩してる。でも、だからこそ「人間にしかできない価値」を提供できる代理店が重宝される。データ分析はAIに任せて、人間は戦略立案や創造性に集中。

山田:「変化対応力」が最重要かもしれない。コロナみたいな大きな変化が、また起こる可能性は高い。その時に、素早く対応策を提示してくれる代理店でないと。

鈴木:あと、「透明性」。何にどのくらいコストがかかるのか、なぜその戦略なのか、すべてクリアに説明してくれる。ブラックボックスを作らない。

山田:最終的には「信頼関係」に尽きる。技術も大事、価格も大事。でも、最後は「この人たちとなら、どんな困難も乗り越えられる」と思えるかどうか。

鈴木:同感です。結局、ビジネスも人と人。お互いを信頼し、尊重し、一緒に成長していける関係を築ける代理店が生き残る。

山田:そういう代理店とは、10年、20年の長い付き合いになる。単発の案件じゃなくて、継続的なパートナーシップ。そこに真の価値がある。

対談を終えて|編集部コメント

大企業とスタートアップという、全く異なる環境にいるお二人の対談から見えてきたのは、発注者が代理店に求める本質的な価値でした。

規模や業界は違っても、「信頼できるパートナーシップ」「変化への対応力」「専門性と創造性の両立」という共通点があることが印象的でした。

特に興味深かったのは、両者とも「人」の重要性を強調していたこと。技術が進歩し、AIが普及しても、最後は人と人の信頼関係が決め手になるという点です。

代理店側も、単なるサービス提供者ではなく、クライアントの事業成功に真剣にコミットする「事業パートナー」としての意識が求められているようです。

発注者の本音を知ることで、代理店はより価値のあるサービスを提供できるはず。この対談が、より良いパートナーシップ構築のきっかけになれば幸いです。

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